モノを無くしてしまったとき
カウンター内の私の前で女の子が突然泣き出したので、
遂に泣かれるくらい変な雰囲気が出ているのかと思ったのですが、
女の子は泣き揺れて、嗚咽も交えながら、
「本を、本を、無くしましたー」と声をさらに大きくしました。
モノを無くすというのは、記憶をたどる限りあまり思い当たらないのですが、
家の鍵を無くしたときは絶望感(家に入れない、出られない)と
恐怖(知らない人が家に乗り込んでくるかも…etc)で
帰り道を何度も往復して、泣きながら探したものです。
親に散々怒られ、結局鍵が出てくることはありませんでした。
後ろに立っていた女の子の母親は見た感じ怖い、という印象を受けたので、
きっと女の子は大層怒られたんだろうな、だからあんなに泣いたんだと、
すこし同情してしまいました。
こんなことが今日ありましたが、10日ほど前は「利用カードを作り直したい」と
40代くらいのサラリーマンが来館したのですが、
10年以上前から本の延滞をし、今も本が返されていないということが判明。
弁償(同じものを持ち込むか、同等の書籍を寄付)になることを伝えると、
「そんな昔の本、あるわけないだろ、阿呆か!」と言われました。
その言葉を聞いた瞬間、一気に醒めた目で見てしまいました。
あの女の子は「モノを無くす」という事が起きた後を知ることが出来、
きっと昨日よりも「モノを大事にする、モノを無くさないように努力する」が
出来るような気がします、私がそうだったように。
そしてあのサラリーマンは、そういう事を経験しなかった、
あるいは経験してきたのに、それに対して何一つ考えることをしなかったのだなと
少し可哀想に見えてしまいました。
それは借りたものであって、あなたのモノではない、
そんな簡単な事も分からないのだなと、もっと可哀想に見えてしまいました。